こんにちは、アロワナです。 絵の事をいつも考えてます。 考えてるんだけど、自分で考えるだけでは行き詰ってきたので イラスト分類チャートを作りました。 絵を見せると、AIがその絵を5分類のパラメーターの値で分析してくれます。 以下にシステムの解説と、使用例を書き起こしします。
はじめに
イラストレーターとして活動していると、常に一つの疑問が頭をよぎります。「魅力的な絵とは、一体何なのか?」この問いは、特に近年のソーシャルゲームで見られるような華やかなイラストを目にするたびに強く感じます。それらの絵は豪華で印象的であり、時には深い物語性さえ感じさせます。しかし、これらの魅力を言語化し、誰もが理解できる形で表現することは非常に困難です。
この課題に取り組むため、私は「イラスト分類チャート」というツールを考案しました。このチャートは、イラストから受ける印象を具体的な単語で表し、その傾向の強さを1から10の数値でスケール化するものです。この方法により、「魅力的なイラスト」という抽象的な概念を、「どのような傾向に特化したイラスト」というより具体的な言葉で表現することが可能になりました。
この記事では、イラスト分類チャートの概念、具体的な活用例について詳しく説明していきます。イラストの魅力を客観的に分析する新しい方法として、皆さんの創作活動やイラスト鑑賞に新たな視点をもたらすことができれば幸いです。
イラスト分類システムの紹介
イラスト分類チャートの核心部分は、5つの評価パラメーターです。これらのパラメーターは、現在サービス稼働中のスマートフォンゲームのイラストを分析する中で、私が受けた印象を言語化したものです。多くの魅力的なイラストを観察し、そこから共通して浮かび上がってきた要素を抽出し、なるべく異なる要素になるよう整理しました。
各パラメーターは1から10のスケールで評価します。これにより、イラストの特徴を数値化し、より客観的に分析することが可能になります。以下、5つのパラメーターとその説明を詳しく見ていきましょう。
- 色彩の鮮やかさ(Vibrancy)
- 評価スケール:1(淡い)から10(鮮やか)
- 測定対象:イラストの色使いの強さや印象
- 色の使用と強さを評価します。彩度、コントラスト、色の多様性を考慮に入れます。
- 細部の緻密さ(Intricacy)
- 評価スケール:1(簡素)から10(緻密)
- 測定対象:背景やキャラクターの細部の描き込みの度合い
- 細部の描写の程度を評価します。テクスチャ、パターン、小さな要素の有無を確認します。
- 動きの表現(Dynamism)
- 評価スケール:1(静的)から10(動的)
- 測定対象:静止画でありながら、どれだけ動きを感じさせるか
- イラスト内の動きの表現を評価します。ポーズ、線の使い方、全体的な構図による動感を考慮します。
- 雰囲気の強さ(Atmosphere)
- 評価スケール:1(中立的)から10(印象的)
- 測定対象:イラストが醸し出す特定の雰囲気や印象の強さ
- イラストが醸し出す全体的な雰囲気を評価します。感情的な影響力や印象の強さを考慮します。
- 物語性(Narrative)
- 評価スケール:1(抽象的)から10(具体的)
- 測定対象:イラストから読み取れるストーリーや状況の明確さ
- イラストが示唆する物語や背景を評価します。キャラクター、設定、シンボルによるナラティブ(物語性)を考慮します。
これらのパラメーターを使用することで、一見主観的に思えるイラストの魅力を、ある程度客観的に分析し、数値化することが可能になります。
重要なのは、これらのパラメーターをバランス良く組み合わせ、作品の目的や意図に沿った効果を生み出すことです。全ての数値が高い評価のイラストが適正であるとは限りません、むしろ作者の意図を効果的に伝えるものが優れたイラストと言えるでしょう。
次のセクションでは、このチャートを使って実際にいくつかのイラストを分析していきます。が、その前に
より直感的で使いやすい形式にしてみましょう。レーダーチャート式のシステムへと進化させました。

チャートを使った具体的な分析例

それでは、このイラストを先ほど提案したイラスト分類システムで分析しましょう。各パラメーターを1から10のスケールで評価します。

ポストアポカリプスの要素を含んだ背景イメージイラスト
- 色彩の鮮やかさ(10/10):
人類滅亡後の世界を描いたイラストとしては、非常に鮮やかな色使いが特徴的です。青々とした植物、澄んだ水面、柔らかな色合いの空など、生命力にあふれた自然の色彩が印象的です。この鮮やかさは、人類不在の世界で蘇った自然の美しさを強調しています。 - 細部の緻密さ(9/10):
建物の崩壊状況や自然の侵食過程が細やかに描写されています。ビルの一部が崩れ落ち、植物が建造物を覆い尽くす様子など、時間の経過を感じさせる細部まで丁寧に表現されています。この緻密さが、ポストアポカリプスの世界の説得力を高めています。 - 動きの表現(7/10):
静寂が支配する中にも、わずかな動きが感じられます。空を舞う鳥や、風に揺れる植物などが、完全に止まっていない世界を表現しています。この控えめな動きの表現が、人類不在の静けさと、なお続く生命の営みのバランスを巧みに表現しています。 - 雰囲気の強さ(10/10):
人類の不在と自然の回帰という、ポストアポカリプスの本質的なテーマが強く表現されています。かつての都市の姿を残しつつも自然に浸食される風景が、喪失感と新たな生命の誕生という相反する感情を同時に呼び起こします。この複雑な雰囲気が、観る者の心に強く訴えかけます。 - 物語性(9/10):
一枚のイラストの中に、豊かな物語性が込められています。人類はどのようにして姿を消したのか、この風景になるまでにどれほどの時間が経過したのか、など多くの疑問と想像を喚起します。建物の形状や残存状態から、かつての文明の繁栄を想起させつつ、自然の力強さと回復力も同時に物語っています。
このイラストは、ポストアポカリプスという重いテーマを、美しさと希望を内包した形で表現することに成功しています。人類の不在という設定でありながら、生命の強さと自然の美しさを称える作品となっています。都市の遺構と蘇る自然のコントラストが、文明の脆さとという深遠なメッセージを静かに、しかし力強く伝えています。
以上の分析から、全てのパラメーターが高い値を示すイラストは、壮大な物語を予感させ、印象的な作品になる傾向があると分析できます。
このように、要素を分けて分析する事はイラストの各側面をより詳細に分析し、評価することができます。また、異なるイラスト間の比較や、特定のスタイルや技法の効果を理解するのに役立ちます。
同じ世界観で描かれた背景を比較分析する
では、実際に先ほどのイラストと、このイラストをチャートを用いて比較、分析してみましょう。
まず、このイラストの分析チャートを作成します。


次に、2枚のイラストを比較し、それぞれの優れている点を分析します。
- 先ほどのイラスト(屋外の都市風景)の優れている点:
- 色彩の鮮やかさ:より明るく鮮やかな色使いで、希望的な、物語の始まりを感じさせる雰囲気を醸し出しています。
- 広大な景観:都市全体を俯瞰する視点で、世界観をより広く表現しています。
- 自然と人工物のコントラスト:建物と植物の融合がよりダイナミック に表現されています。
- こちらのイラスト(廃墟の内部)の優れている点:
- 細部の緻密さ:近景のため、細かな質感や崩壊の様子がより詳細に描かれています。
- 雰囲気の強さ:閉鎖的な空間が持つ独特の静寂と神秘性が強く表現されています。
- 光と影のコントラスト:天井からの光が作り出す陰影が、神秘的な雰囲気を高め、全体の視認性を高めています。
このように、2枚のイラストと、チャート化した特徴を比較する事で様々な判断材料を得る事が出来ます。
例
こちらの廃墟の内部を描いたイラストの方が、キャラクターの立ち絵との合成に適していると考えられます。
- スケール感:人物大のキャラクターが自然に配置できる空間スケールです。
- 奥行き:手前から奥へ続く空間構成により、キャラクターの配置位置の自由度が高くなります。
- 光の演出:天井からの光が、キャラクターにも自然に当たるように見せることができます。
- 雰囲気の補完:静謐な廃墟の雰囲気が、キャラクターの表情や姿勢をより引き立たせる可能性があります。
一方で、先ほどの屋外の都市風景は、広大な景観を活かしたオープニングやシーン転換などで効果的に使用できるでしょう。
おわりに
イラストの世界において、クライアントからの依頼や個人的な創作活動を問わず、常に「魅力的な部分」は意識されます。これまで、その表現方法はイラストレーターの個人的なセンスや芸術性といった、曖昧で主観的な感覚に頼ることが多かったのではないでしょうか。
確かに、素晴らしいイラストを生み出すためには、イラストレーターの感性が欠かせません。個人の独創性や直感は、作品に魂を吹き込む重要な要素です。しかし、それと同時に、より客観的な視点からイラストを分析し、改善する手法があれば、表現の幅はさらに広がるのではないでしょうか。